| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-389 (Poster presentation)

モウソウチク林における放射性セシウム除染方法の提案 -カリウム動態から考える-

*梅村光俊, 金指努, 杉浦佑樹, 竹中千里(名大院・生命農), 小澤創(福島県・林研セ)

2011年3月11日に発生した東日本大地震により、東京電力福島第一原子力発電所は壊滅的な被害を受け、大量の放射性物質が環境中に放出された。放射性物質の中でも137Csは半減期が約30年と長く、汚染は長期にわたる問題となる。モウソウチクは主に民家周辺に植栽されており、竹林の除染が早期復興に向けた課題の一つである。竹林における放射能汚染調査結果としては、食品であるタケノコのデータがすでに発表されており、イメージングプレート画像によるタケノコ中放射性セシウム(Cs)の分布(箕輪, 2011)が、同じアルカリ金属であるカリウム(K)の濃度分布(Umemura and Takenaka, 2012)とほぼ一致することから、CsとKの挙動の類似性が推測された。そこで、放射性Csのタケ植物体内における蓄積特性をK動態から推測し、モウソウチク林における除染方法を提案することを目的とした。

タケのK動態に関する調査は、愛知県内のモウソウチク林3林分で行った。稈、枝、葉の現存量は胸高直径からの推定式により算出し、地下茎、根の現存量は50 cmの方形区各サイト5箇所で地下茎と根を採取し算出した。2009年12月に各サイトから採取したタケ1本の各器官および地下茎、根のK含有量を分析し、それぞれの現存量に乗じてK蓄積量を求めた。

その結果、Kはタケの各器官のうち稈に約46%、地下茎に約40%蓄積されており、林分全体におけるK蓄積量の90%近くが稈と地下茎に存在することが明らかとなった。また福島の現地調査により、林床リターからのCsの溶脱が少ないことなどが明らかになっている(金指ら, 2012)ことから、これらの知見を総合的に考察し、効果的なCsの除染方法を検討する。


日本生態学会