| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-396 (Poster presentation)

冷温帯コナラ林におけるキノコのCO2放出量とその季節変化

*三島綾乃(早稲田大・教育), 友常満利(早稲田大・院・先進理工), 吉竹晋平(岐阜大・流圏セ), 小泉博(早稲田大・教育)

キノコは代謝の過程でCO2を多く放出している。しかし、キノコが発生する森林内における明確なCO2放出量は明らかになっていない。また、過去に行われたキノコの呼吸量に関する研究は柄を持つ軟質菌を対象にしており、枯死木などに生着する硬く柄を持たない硬質菌の研究例は不足している。そこで本研究では、森林内でのキノコのCO2放出量を軟質菌と硬質菌の二つの形態に分類し調査した。調査地は長野県軽井沢の冷温帯コナラ林で、2012年5~11月に毎月調査を行った。調査区 (30 m×30 m) の中に発生したキノコを対象にバイオマスと呼吸速度を測定し毎月のCO2放出量を算出した。

軟質菌のバイオマスは月によって大きく変化し、10月に最大となった。一方、硬質菌は月を重ねるごとに増加し、11月に最大となった。この様に、キノコのバイオマスは菌の種類により季節性が異なることが明らかになった。次に呼吸特性を比較すると、軟質菌は月によって10℃での呼吸速度 (R10) は大きく変化したが、温度依存性 (Q10) はどの季節でも2前後の安定した値を示した。一方、硬質菌のR10は極めて低く、Q10は高い値を示した。軟質菌と硬質菌では呼吸特性が大きく異なるため、森林内でのキノコのCO2放出量を推定するためには、形態だけでなく呼吸に関しても二つに分ける必要があると考えられた。さらに、それぞれの菌の月当りのCO2放出量を検討すると、軟質菌の呼吸量は10月に最大となり、硬質菌は7~9月の夏に多くなる傾向が見られた。また、軟質菌と硬質菌の呼吸量はそれぞれバイオマスと気温に影響されていた。最後に、森林内のキノコの年間のCO2放出量を推定したところ3.5 gCO2 m-2 yr-1と見積もられ、このうち硬質菌が2割以上を占めていた。


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