| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-005 (Poster presentation)

大津波1年後に何が生えてきたか ~岩手県沿岸南部の記録~

*鈴木まほろ(岩手県立博物館),岩手県植物誌調査会,岩手県立大船渡高等学校自然科学部

2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震による大津波の被害を受けた地域では、津波とその後の人為により、多くの場所で植生が一度ほぼ完全に消失し、以後も大きく変化しつつある。岩手県では、津波後の植物相の現状と、今後の長期的な変化を記述することを目的とし、市民や高校生らによる野外調査を2012年から開始している。

2012年の調査は岩手県沿岸南部(宮古市以南)において6月から10月の間に実施した。調査地として砂浜・礫浜・岩浜、漁港、河川敷、住宅商用地跡など20ヶ所を選んだ。面積は各100平方メートル以上で、数名で歩き回れる範囲に生えている維管束植物をすべて記録し、調査時に繁殖器官をつけている種は標本を作成して同定に用いた。

調査の結果、砂浜や住宅商用地など、津波で植生がほぼ完全に消失した場所では、全記録種数のうち外来植物(史前帰化種を除く帰化種と園芸種)の種数が占める割合(帰化率)と1・2年草の種数が占める割合がともに30%を超え、50%を超える場所もあった。一方、岩浜や河川敷等では植生が残存しており、帰化率は0%から52%と大きくばらつき、1・2年草の割合は30%以下であった。

陸前高田市の高田松原では、震災以前に綿密な植生調査が行われているため(鈴木善久2006・2007)、大津波の前後で植物相の比較を行うことができる。2005~6年の調査時には砂浜と松林を含む区域の植物種数が83、帰化率が24%、1・2年草の割合が28%であったが、大津波によって松林を含む全植生がほぼ消失し、1年後の2012年には種数108、帰化率31%、1・2年草の割合41%となった。また、過去に記録のなかった帰化種が津波後に多く記録された。

これらの結果から、津波を受けた土地における1年後の植物相と津波の影響、また津波以前の植生や立地との関係について考察する。


日本生態学会