| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-017 (Poster presentation)

東日本大震災の津波による海岸植物群落への影響-市民調査の結果から-

*小此木宏明(日本自然保護協会), 朱宮丈晴(日本自然保護協会),由良浩 (千葉県立中央博物館)

日本自然保護協会では2003年〜2007年にかけて、日本全国の危機的な砂浜海岸の環境、植物群落の現状を明らかにするために市民参加により調査を実施した。

2011年3月11日の東日本大震災では地盤沈下、砂浜海岸の流失などさまざまな海岸の改変が起こり、植物群落にも様々な影響を及ぼしたと考えられるが、それぞれの海岸で具体的にどのような変化が生じたかは明らかにされていない。そこで、当時と同じ海岸を同じ調査方法で調査することにより、震災前後の海岸環境、海岸植物の変化を明らかすることを目的とした。調査は2012年4月〜10月にかけて実施し、青森県から千葉県に至る141ヶ所の砂浜海岸で80名の市民の協力を得てデータを収集した。

その結果、72ヶ所で海岸の幅が狭まり、そのうち、11ヶ所では沈降、侵食などの理由により海岸そのものが消失した。また20ヶ所の海岸では津波後に後背湿地ができたとの報告もあり、大きな環境の変化があったことが明らかになった。

今回の調査地点のうち127ヶ所の海岸で震災前後に同地点で調査が行われ、データの比較ができた。指標とした34種の海岸植物の各調査地点での平均出現種数は震災前6.9種、震災後6.3種と大きな変化はなかった。また、震災後に植物が出現しなかった海岸のうち、震災以前から植物がなかった海岸は4ヶ所、砂浜が消失した海岸が5ヶ所、復興の工事により消失もしくは確認できなかった場所が2ヶ所であり、海岸植物群落への津波の直接の影響は少なく、砂浜がなくならない限り植物は生存していると考えられた。

種ごとに見ると、1~2年生草本のオニハマダイコン(外来種)、コマツヨイグサ(外来種)、マルバアカザ、オカヒジキの出現頻度が増加し、多年生草本のハマニガナ、ハマエンドウ、コウボウムギなどの出現頻度が低下した。


日本生態学会