| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-018 (Poster presentation)

宮城県農耕地景観における津波被災傾度に沿った植生分布パターン

*西村愛子,浅井元朗,渡邊寛明(中央農研)

2011年3月11日の東日本大震災により,海岸から5~6kmの内陸地域にまで津波被害がおよび,多くの農地が流失や冠水等の被害を受けた。被災した農地では津波による直接的な植生被害だけでなく,瓦礫や土砂の除去,圃場整備や除塩等の復旧作業による頻繁な撹乱状況が続いている。このような撹乱下にある農地では,外来種などの競争力の強い種の侵入が懸念される一方で,被災後の放棄水田では,被災前には見られなかったミズアオイやヒメシロアサザなど絶滅危惧種の生息が確認されるなど,被災前とは異なる植生が成立しているとの報告もある。営農に適した植生管理の必要性に加え,今後,農耕地の景観全体を通した多様な植物相を維持するためにも,農地の復旧過程における植生の分布パターンの評価が必要である。本研究では,津波被災後の農耕地域における植生分布パターンを評価するため,宮城県名取市において,海岸から内陸へ向けて約4kmにわたって被災程度や管理状況の異なる62地点の圃場を対象に2012年7月と9月の2回,植生調査を行った。指標種による植生タイプの分類を行った結果,4つのタイプに分類された。被災程度が軽度で2011年から作付けが開始された圃場と,除塩等復旧作業後2012年から作付けが開始された圃場は,両方の圃場が混在する形で2つの植生タイプに分類された。これらは海岸からの距離など被災傾度に関わらず,作付された作物種により植生タイプが分類される傾向が認められた。3つめはノボロギクを指標種とし2012年除塩や整備作業が進行中の圃場が多く分類された。4つめに分類されたのはサンカクイを指標種とするタイプで,地盤沈下や浸水等の被災程度が最も大きい未復旧の農地が分類された。このように,被災後に発達した植生タイプは第一に被災の大きさにより分類され,その後は圃場の管理状況によって異なる植生タイプへ発達することが示された。


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