| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-033 (Poster presentation)

博物館-高等学校の連携による地域資源の教材化~ブナ移植実験を事例として~

伊藤千恵,小林誠,佐藤一善(十日町市立里山科学館キョロロ),山本岳(新潟高校),早川靖(安塚高校松之山分校),永野昌博(大分大学・教育)

新潟県十日町市松之山は、多雪地ならではの里山のブナ林が広がり、ブナ林を地域資源として観光や教育に活用している地域である。一方で、ブナ林は1970年代以降減少しており、耕作放棄地や荒れた人工林を元のブナ林へ再生する取り組みも行われている。しかし、ブナの植樹ニーズが高まりつつも、当地域におけるブナの植樹に適した時期やサイズに関する定量的なデータは得られていなかった。同時に、教育資源として活用する学校側も「植えて終わり」ではなく、より深い地域資源への理解や生徒の主体的な参加を望んでいた。そこで、地域の高等学校と博物館が連携し、苗畑におけるブナの移植実験を行い、教材として新たな活用を図った。

実験では、当年性実生と高さ30cm程に成長した幼木を、それぞれ春、夏、秋に植えた。春の移植作業のみ全校で行い、その後は生物の授業内で経過観察を行った。その結果、秋植え苗の生存率が最も高く、春と夏では実生よりも幼木の生存率が高かった。この結果を受け、生物履修の生徒たちは、春と夏の生存率の低さは夏の暑さや水分不足が原因ではないかと考え、全校生徒にわかりやすい形でまとめた。そして翌年には、夏に生存率を上げる手法(被陰処理、摘葉処理、未処理)の検討と、他種(コナラ)との比較を行った。その結果、ブナ、コナラともに未処理に比べ被陰処理をしたものは、生存率が高かった。また、コナラはブナに比べ生存率が高くなった。これらの結果は、ブナの植栽を不適な時期に実施する際に活かしていきたい。

また、生物履修の生徒のアンケート結果は全校生徒の結果に比べ、里山保全の意識や生物への興味が強くなったと答える生徒が多かった。そのため、一過的な授業ではなく、継続し原因の考察までを含めた授業が重要と考えられる。


日本生態学会