| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-052 (Poster presentation)

赤石山脈南部の亜高山帯の外生菌根菌相

*菊地淳一,中川明宏,乾久子(奈教大)

日本の外生菌根菌相の研究の多くは低地や低山のアカマツ-コナラ林や、シイ-カシ林、モミ林等で行われ、亜高山帯の針葉樹林や針広混交林の外生菌根菌相の研究は、富士山(柴田1997, 2006)および秩父山地(Ishida et al. 2007)、志賀高原(Ogawa 1977)等しかなく、亜高山帯の外生菌根菌相は未知の部分が多い。2011年8月、9月、10月初旬の3回、赤石山脈南部亜高山帯針広混交林において外生菌根菌の子実体調査を行った。標高1000~2400 m付近までの登山道を歩き、周辺の外生菌根菌の子実体を採取した。標高の低い場所ではモミ、ツガ、ゴヨウマツ、シデ類、ミズナラが多く、高い場所ではシラビソ、オオシラビソ、トウヒ、コメツガ、ツガ、ダケカンバ、カラマツ等が多く生育していた。約500個の子実体を採取し、FTAカードを用いてDNAを採取した。ITS領域の塩基配列を解析し、97%以上の相同性が見られた場合に同種として判断した。一部未解析のサンプルも残っているが、これまでに170種を越える外生菌根菌が区別された。種レベルまで同定できたのは半数以下であり、そのうち和名のついている種が30種を越え、日本新産種も多く残されていることが明らかになった。ベニタケ科が60種以上で最も多く、フウセンタケ科が30種と多く、イグチ科やテングタケ科が20種前後と多くみられた。また、Chroogomphus sp.となった種は形態的にはC. tomentosus(フサクギタケ)に似ているが、塩基配列が7%程度異なり、C. tomentosusC. pseudotomentosusとは別種であると考えられるなど、新種もまだ多く残されていると考えられる。


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