| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-057 (Poster presentation)

半乾燥地における夏の降雨への外生菌根群集の反応

*谷口武士(鳥取大学・乾地研),Michael Allen,Greg Douhan,Kunihiro Kitajima(カリフォルニア大学リバーサイド校),山中典和(鳥取大学・乾地研)

乾燥地や半乾燥地では「水」が植物にとって重要な資源であるが、主に樹木と共生する外生菌根菌にとってもこの水は重要な資源である。外生菌根菌の群集が季節的な乾燥によって変化することや、夏の乾燥した時期に水を与えると外生菌根菌の感染率が高くなることが報告されている。しかしながら、この乾燥の時期に与えた水に対する短期的な菌根群集の応答については報告が少ない。今回調査を行ったアメリカ、カリフォルニア州南西部では乾燥した夏に季節風に伴う降雨がある。ここで供給される水は菌根群集を変化させ、宿主植物にも影響を及ぼす可能性がある。演者らは、年降水量500 mmのマツ-ナラ林において、2011年4月から8月まで、季節的な乾燥に伴う外生菌根群集の変化を調べた。また季節風に伴う降水の後、降水の影響を経時的に調べるとともに、さらに水を添加する処理区を設け、降水の量が外生菌根群集に与える影響について調査を行った。4月から8月にかけた土壌の乾燥に伴い、菌根菌の種数や種多様性は減少した。この期間を通じて、優占菌種はCenococcum geophilumであった。ミニライゾトロンによる観察から、7月下旬の降雨の後、土壌中の菌糸は1日後には反応を示していた。菌根群集については、5日後には変化が起こり、7日後に水添加処理区では菌根の種多様性がピークに達し、14日後には減少した。14日後の菌根群集は、降雨直後、あるいは水添加直後(1日以内)と類似していた。このことは水の供給後、水に対する感受性の高い菌根菌の急速な増加と減少が起こり、土壌が再度乾燥すると、乾燥に適応した菌根群集に戻る可能性を示唆している。


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