| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-095 (Poster presentation)

8年間の温暖化実験による湿原植物の群集構造変化

*神山千穂(統数研・リスク解析戦略研究セ),及川真平(東農大・国際食料情報),上田実希,彦坂幸毅(東北大・生命科学)

地球の平均気温は今世紀中に1.4から5.8℃上昇すると予測されており、植物群集が温暖化にどのように応答するかを予測することが重要な課題となっている。本研究では、温暖化に対して脆弱な生態系の一つとされる湿原を対象に、8年間の温暖化実験を行った。2004年6月から、青森県八甲田山系に位置する酸ヶ湯湿原において、3箇所に2基ずつ、合計6基のOTC(Open Top Chamber)を設置し、植物の生育期間中の気温を約2℃上昇させた。2011年に、温度環境の変化が群集構成種(7種)の形態、葉のフェノロジー、光合成に与える影響について破壊程度を最小限にして調べ、2012年には、生産性に与える影響を調べるために地上部現存量が最大になる8月に刈り取りを行った。

群集高は、3箇所すべてで生育期間を通して、コントロール区に比べてOTC区で高かった。各種の生長の指標となる葉の高さと葉のサイズは、禾本型草本3種ではOTC区で高く、広葉型草本2種や木本2種では違いがなかった。常緑性の葉を持つ4種中3種で、当年葉の展葉開始時期がOTC区で早まっていたが、禾本型草本にはそのようなフェノロジーの違いは見られなかった。一方で、光合成においては、3種の禾本型草本のうち2種において、OTC区で光合成速度が高く、それらは、窒素あたりの光合成速度(PNUE)、葉重葉面積比(LMA)、窒素含量の変化による影響を受けていた。このことから、温暖化に伴う禾本型草本の成長の増加は、フェノロジー変化によるものではなく、光合成速度の増加による影響を受けていることが示唆された。本発表では、地上部バイオマスや葉面積指数(LAI)、各種の地上部バイオマスといった量的な変化に関する結果を合わせ、比較的長期間にわたる温度操作が、湿原植物の群集構造に与える影響について考察する。


日本生態学会