| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-099 (Poster presentation)

亜熱帯林から亜寒帯林における現存量推定のための相対成長式

*石原正恵(北大),宇都木玄(森林総研),田内裕之,永野正弘,安藤信(京大),宮田理恵(甲南女子高),黒川紘子(東北大),饗庭正寛(東北大),小野田雄介(京大),日浦勉(北大)

森林は大量の炭素を蓄積しており、炭素循環に大きな影響を与えている。森林の炭素蓄積量の推定方法の一つは、調査区内の樹木のサイズを測り、回帰式(相対成長式)を用いて樹木個体のサイズから現存量を推定し、それを積算して林分全体の現存量を求める方法である。多数の相対成長式が日本各地で個別に開発されてきたが、これらの式を別の場所に適用する場合には、現存量推定に大きな誤差をもたらす。本研究の目的は、既存のデータを統一的に解析することで、日本各地の天然生林に適用可能な汎用性の高い相対成長式を開発することである。現存量推定には、(1)樹木の直径とともに樹高を相対成長式に入れるべきか、(2)各樹種の材密度を相対成長式に入れるべきか、それとも機能群(落葉樹・常緑樹、広葉樹・針葉樹)別の相対成長式で十分か、を検討した。

日本国内の天然生林で行われた現存量調査で、個体ごとのデータが載っている文献を集めた。その結果、1957~2012年に出版された35文献に、3つの未発表データを加え、1355個体(114種)のデータが集まった。解析には木本性ツルを除き、樹高、各器官の重量、材密度のデータが揃っており、胸高直径= 1~75 cmの1116個体(91種)のデータを用いた。

複数のモデルを比較した結果、幹現存量の推定には直径と共に樹高も入れた相対成長式が最も精度が良かったが、地上部現存量の推定には直径のみの相対成長式もほぼ同程度に精度がよかった。また、幹現存量および地上部現存量共に、材密度を入れた相対成長式が最も精度が高く、次いで機能群別の相対成長式、種間共通式の順であった。本研究の相対成長式を用いることで、日本各地の天然生林の炭素蓄積量の推定精度が向上すると期待される。


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