| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-102 (Poster presentation)

養分制限を解除したウダイカンバの資源貯蔵状況-マスティング前後の比較

*伊藤江利子(森林総研・北海道), 長谷川成明(北大・低温研), 宮崎祐子(岡山大・院・環境), 倉本恵生(森林総研・北海道)

豊凶現象を示す樹種において、養分飽和が樹体内の資源貯蔵に与える影響を明らかにするため、植栽4年後より連年施肥下(110 Kg N ha-1、24 kg P ha-1、46 kg K ha-1)で育成した37年生ウダイカンバ(養分飽和個体)に貯留された資源量の経年変化を測定した。養分飽和個体と無施肥で育成した養分制限個体(対照個体、37年生)の各10個体から、2011年(大豊作年)と2012年(凶作年)の展葉開始前に当年枝・1年枝・幹木部(辺材)・幹内樹皮(師部)・根木部(辺材)・根内樹皮(コルク形成層)・雄花・葉芽・雌花芽・種子を採取し、非構造性炭水化物(NSC)濃度(可溶性糖類・デンプン)をフェノール硫酸法および酵素を用いた加水分解法により、また全炭素窒素濃度を乾式燃焼法により測定した。

可溶性糖類と全窒素(N)の含有濃度は雄花や葉芽等の梢端部位で高く、枝や内樹皮で中程度、幹や根の木部で低かった。デンプン濃度はいずれの部位でも非常に低く、NSCの大半は可溶性糖類として存在していた。養分飽和個体は養分制限個体と比較してN濃度が高く、NSC濃度が低い傾向が認められた。2011年と2012年の差異は養分制限個体の根木部で顕著に認められた。NSC濃度とN濃度の双方が2011年で高かった。両濃度は2012年に低下し、養分飽和個体との有意差が認められなくなった。養分制限個体の根木部はデンプン濃度が高い部位であるが2012年は2011年に比較して有意に低下したが、養分飽和個体よりは高かった。養分制限個体では根木部を資源貯蔵器官として利用し、豊作年の繁殖投資に貯蔵資源を用いることが示唆される一方で、養分飽和個体には資源貯蔵の存在を示唆する結果が認められなかった。


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