| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-104 (Poster presentation)

カラマツの結実同調の至近要因

今博計(道立林試)

カラマツの結実は花芽分化期(6月下旬~7月上旬)の気象(気温、日射、降水量)が影響するといわれ、気温が高く、日照時間が長く、降水量が少ないと、翌年、豊作になると報告されている(柳原1958、1959、1960、岡田ら1997)。しかし、これまでの解析では、定量的な解析はほとんど行われておらず、影響を及ぼす気象因子やその時期については不明な点が多い。そのため人為的な着花調節技術の開発にあたっても、対象とすべき環境条件が定まっておらず、操作実験の妨げとなっている。

ここでは岡田ら(1997)が解析した長野県における1923~1956年のカラマツ種子採種量データの再解析により、近年Kelly et al. (2012)、Smaill et al. (2011)らが指摘している開花2年前の気象が、カラマツにおいても密接に関わっている可能性が示されたので報告する。

気象要因の解析の前に、種子生産量に及ぼす内生的要因の影響を調べるため、スペクトル分析による周期性の解析を行った。その結果、3年の周期性が認められた。これは2~3年生の短枝に花を着けるカラマツ属特有のシュート構造(今・来田2012)が関係している可能性を示唆していた。

2年前と1年前の夏季(6~9月)の降水量、EPR(蒸発散能/降水量)、最高気温、日照時間と種子採種量との相関関係を調べた。その結果、2年前の6~7月の降水量、2年前の6~7月のEPR、1年前の7月の最高気温、2年前の6~8月の日照時間、1年前の7月の日照時間と強い相関関係が認められた。2年前の6~7月が多雨で、1年前の6~7月が高温小雨の条件が重なった場合に、豊作になっていた。

以上の結果から、内生的なリズムと2年前および1年前の気象条件が組み合わさることとで、カラマツ特有の結実同調が生じていると考えられた。


日本生態学会