| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-111 (Poster presentation)

異型異熟性はタブノキの繁殖成功を左右するのか?

*渡部俊太郎(滋賀県大), 金子有子(琵琶湖環境科学研究センター), 野間直彦, 西田隆義(滋賀県大)

木本植物は一般に自殖由来の子孫の生存率が極めて低いことが知られている。このため、木本植物の一部では自家受粉を回避する機構の一つとして、両性花の雌雄の機能が転換するHeterodichogamy (異型異熟)という現象が知られている。本報告では日本の照葉樹林の代表種であるタブノキにおける異型異熟性の実態を調査し、異型異熟性が繁殖成功に関する負の頻度依存淘汰によって維持されるという予測を検証する。調査は滋賀県彦根市の犬上川河口部に成立するタブノキ林で行った。脚立で枝先を観察することができる4個体を選び、各個体につき20花序にマーキングした。その上で日中3時間おきに花序内の雄花、雌花の数を計数した。枝先の直接観察ができなかった5個体については、枝先を切り落として性型を特定した。また結実期に、花序ごとに果実の数を計測した。花の計数の結果、タブノキにおいては個体内の花の性型は一致していること、一日の中で個体の機能的な性が入れ替わることが明らかになった。また個体の性型として、雄から雌に入れ替わるもの(Morgning Male: MM型)と雌から雄に入れ替わるもの(Morgning Female: MF型)が集団中に存在することが明らかになった。枝先の観察の結果、犬上川の集団におけるMF型とMM型の比率は7:2であり、MF型に偏る傾向が見られた。また結実数の結果は集団中で小数派であったMM型で結実率が高くなる傾向が見られた。異型異熟性が繁殖成功に関する負の頻度依存淘汰によって維持されるという予測を支持するものである。

これらの結果に分子マーカーによって推定された交配パタンの結果を合わせて報告したい。


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