| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-114 (Poster presentation)

モニ1000データを用いた樹木の種子生産パターンの解析

*佐伯いく代(自然環境研究セ), 鈴木智之(信大・山岳総研)

樹木の種子の生産量は、年ごとに変動することが知られている。こうした種子生産の動態は、樹木の実生更新の成功率を左右するだけではなく、森林に生息する動物の食物資源量を決定する要因としても重要である。しかし、その変動パターンをとらえるには、長期の観察が必要であり、我が国ではまだ限られた地域や樹種を対象としてしか調べられていない。そこで本研究は、モニタリングサイト1000森林・草原調査で得られた落下種子データを用いて、広域・多種にわたる種子生産量の変動パターンを明らかにすることを目的とした。モニタリングサイト1000森林・草原調査では、全国21のサイトにおいて、2004年度からリタートラップによる落下種子量の調査を実施している。これらの調査から得られたデータを用い、樹種ごとの種子生産量、落下ピーク時期、および変動パターンの地理的変異について解析した。約50種の木本植物を対象に、種子生産量の変動を調べたところ、高い変動係数を示したのはツガ、アオダモ、アカシデなどであった。一方、変動係数が小さかったものは、カエデ類、サクラ類、ツル性木本であった。堅果、液果、その他の果実タイプ別に分類して調査区ごとに落下時期のピークを調べてみると、堅果は、秋季に明瞭なピークを持つことが多いのに対し、液果およびその他の果実は、落下時期の年内の変化が大きい傾向にあることが明らかにされた。豊凶の同調性については、地理的に近い調査区で年変動のパターンの類似する樹種がみられた一方、地理的距離だけでは説明の難しい事例もあった。モニタリング調査を継続することで、樹木群集の種子生産の動態を把握し、その機構を解明することに寄与できると考えられる。


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