| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-148 (Poster presentation)

地理的に偏った市民データを用いた鳥類の広域分布予測

*比嘉基紀(北大・院・農),山浦悠一(北大・農),小泉逸郎(北大・創成),小野理(道総研・環境研),中村太士(北大・農)

市民による生物分布調査データは、マクロ生態学分野において重要なデータソースとなりつつある。しかし、市民による調査は一般に地理的に偏って行われる。人口の多い地域では同一地点で複数回の調査が行われるが、人口の少ない山地では調査地点・回数ともに限られている。この調査データの地理的偏りは、生物分布を推定する際に大きなバイアスを生じさせうる。

本研究では、鳥類を対象に観察プロセスを考慮した分布予測モデルを構築し、調査努力量の地理的偏りの補正の重要性について検討した。分布予測モデルには、生態的プロセス・観察プロセスを区別した階層ベイズモデルを用いた。北海道立総合研究機構環境科学研究センターの野生生物分布データベース(鳥類)より抽出した、森林及び湿地性の一般鳥類100種のデータを使用してモデルを構築した。データベースの約4割は市民による観察データで、調査地点・回数ともに札幌や小樽、帯広などの人工集中地区に多く偏っていた。生態的プロセス(鳥類分布)の説明変数には、森林・草地・湿地の面積と夏期平均気温、標高を使用した。観察プロセスでは、調査努力量の指標として、1回の調査の観察種数を元に区分された各調査時の調査方法(ポイントセンサス,ラインセンサス,その他)と調査者(市民,その他)を用いた。また、調査努力量を考慮しない従来のモデルで分布予測を行い、モデル間・種間で結果を比較した。発表では、調査精度と調査回数を考慮したことによるデータの地理的偏りの補正効果について議論する。


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