| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-150 (Poster presentation)

黒尊川流域におけるテナガエビ2種の動態ー重要文化的景観のなかで

*山下慎吾(魚山研),川村慎也(四万十市教委),田辺義武(しまんと黒尊むら)

2009 年 2 月,文化庁により四万十川流域(5市町村を含む)が重要文化的景観として選定された.文化的景観とは「地域における人々の生活または生業および当該地域の風土により形成された景観地で我が国民の生活または生業の理解のため欠くことのできないもの(文化財保護法第二条第一項第五号)」と規定されているものである.

今回の検討対象地である黒尊川は,流路延長約34kmの河川で,四万十川の河口から約32km地点に合流している.また,四万十川流域のなかで最も透明度が高い河川であり,重要文化的景観選定区域のなかでも重点地域に該当する.今回,景観の保全活用を検討する過程で,目の前の川でテナガエビなどを採って食べることができる状態こそが文化的景観の本質的価値を表象するものであるという整理がなされ,同時に黒尊川が質の高い学びの場として活用されることも期待されている.

そこで,黒尊川流域において,テナガエビ類2種に関する基礎情報の収集と,学びの場としての可能性を探ることを目的として,流域の方々や興味ある方々,研究者などが一緒になって調査を開始することとした.調査は,2012年5月から12月まで月1回,黒尊川の3地点において,小型定置網を用いた定量調査を行った.調査の結果,3地点間でヒラテテナガエビとミナミテナガエビの出現状況がまったく異なること,個体数や性比などに明瞭な季節変化がみられることなどがわかってきた.また,テナガエビ類の種類やサイズによって料理の使い分けがされていること,あるタイミングで大量に出現する個体群が”ナガセエビ”という名でよばれていることなども知ることができた.本発表では,テナガエビ2種の出現状況にあわせて,一緒にフィールド調査にはいることで生じる楽しさについてもお伝えしたい.


日本生態学会