| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-180 (Poster presentation)

天敵との再会に対する多年生の外来植物の適応〜Qst - Fst法を用いて〜

*坂田ゆず(京大院・農), 大串隆之,安東義乃(生態学研究センター),山崎理正,井鷺裕司(京大院・農)

外来生物の定着後の動態を解明することは、生物の新しい環境での進化動態を理解する上で重要な手がかりとなる。本研究では、近年急速に分布を拡大している外来昆虫アワダチソウグンバイ(以下グンバイ)がその侵入地において、多年生の外来植物セイタカアワダチソウの形質に与える影響を解明することを目的とした。グンバイの定着年数の異なる集団間において、(1)グンバイの分布パターン及び食害率の地理的変異の野外調査、(2)共通圃場実験による植物形質(防御形質、成長形質、繁殖形質)の測定、(3)中立マーカーに基づく遺伝構造の解析を行った。そして、表現型レベルでの集団間の遺伝的分化Qstと中立分子遺伝マーカーに基づく集団間の遺伝的分化Fstの比較を行い、グンバイがセイタカアワダチソウの表現型分化に及ぼす影響を評価した。

野外集団においては、定着年数が長いほど集団においてグンバイによる食害率が低下する傾向が見られたが、食害率に及ぼす定着年数の影響は有意ではなかった。これに対して共通圃場実験では、定着年数が長い集団ほどグンバイに対する抵抗性が有意に高まっていることが示された。また、グンバイの食害圧下においてセイタカアワダチソウの繁殖形質には差が見られ、定着年数が長い集団ほど花数・ライゾームの長さはともに有意に大きかった。FstとQstの比較によりこれらの形質の分化は、遺伝的浮動のみでは説明できず、定着年数の異なる集団間における別々の局所環境に対する方向性選択により進化したと考えられた。これらの結果から、外来昆虫の侵入が多年生の外来植物の自然選択圧となり、防御形質に急速な適応進化が起こっていることが示唆された。


日本生態学会