| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-186 (Poster presentation)

広食性昆虫の寄主植物利用で植物の系統関係は重要か

*三浦 和美 (京大 生態研), 大崎 直太(京大 農)

植食性昆虫種の大半を占める狭食性昆虫の寄主植物利用を理解する上で、寄主植物の系統的な近縁性の重要性が近年指摘されてきた(Pearse and Hipp 2009, Rasmann and Agrawal 2011)。その反面、広食性昆虫の寄主植物利用を理解する上で、その系統的な近縁性の意義について、ほとんど検討されていない。系統的により近縁な植物ほど昆虫のパフォーマンスがより似ていれば、寄主植物の系統的な近縁性は、その広食性昆虫の寄主植物利用を理解する上で、重要であると言える。そこで、寄主植物の系統的な近縁性が広食性バッタのキンキフキバッタ(キンキ)幼虫のパフォーマンスに及ぼす影響を検討した。

キンキの生息地に生育する19種の植物をキンキ幼虫に単独で与えて、その生存率を求めた。そして、各植物種の葉の形質を計測した。(1) キンキ幼虫の生存率や計測した葉の諸形質に系統的な近縁性があるのか、Pagelのlambda(Pagel 1999)でPhylogenetic signalを検討した。(2) 計測した植物種の形質がキンキ幼虫の生存率に影響するのか、系統関係の影響を考慮した(Phylogenetic generalized least squares)重回帰分析で検討した。

その結果、(1) 検討した葉の諸形質やキンキ幼虫の生存率にPhylogenetic signalはなく、系統的な近縁性は認められなかった。(2) 植物の葉の硬さと葉の上面軟毛密度がキンキ幼虫の生存率と有意な相関があった。これらは、植物の系統的な近縁性よりも上記の形質の方がキンキ幼虫の生存率により重要であること、そして、この昆虫のパフォーマンスに影響する形質は、植物の各系統で独立に生じている可能性を示唆する。


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