| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-206 (Poster presentation)

A new look at evolution in Galapagos archipelago: petal sizes for avoiding visits from nectar robber in Cordia lutea

*坂本亮太(東大・総合文化), Henri Herrera (Charles Darwin Foundation)

花弁は送粉者に対するディスプレイとして機能する。サイズや色,開花方向などの花弁形質の差異は送粉者の誘引に強く影響し,植物の繁殖成功の多寡を決定する一因となる。一方で花弁には,送粉者を引き寄せる機能だけでなく,送粉者の足場としての機能も有していると考えられる。特に大型の送粉者は,花を掴み,体重を預け,姿勢を保持することによって吸蜜を実現している。

そこで我々は,ガラパゴス諸島に自生するムラサキ科植物Cordia luteaを材料に,花弁の足場としての機能の検出,および形質進化の解析を試みる。本研究では,「盗蜜者であるクマバチの生育密度が高い島では,Cordia luteaの花弁形質がクマバチによって掴まれにくくなるよう進化し,盗蜜頻度が抑えられている」という仮説を設け,その検証を行った。

花弁サイズと,クマバチによるCordia lutea個体への出現頻度を計測した結果,クマバチの出現頻度が高い島で,花弁サイズが有意に大きかった。しかしながら,実際に花に着地し盗蜜した頻度は島間で異ならず,花弁サイズとの有意な相関関係も示されなかった。ところが,花の前でホバリングをしたけれども花への着地が行われなかった頻度を,ためらい頻度として計測した結果,花弁サイズとの間に有意な相関関係がみられた。一方,着地後の滞在時間に島間で有意差は検出されず,花弁サイズが着地後の盗蜜行動に対しては影響しないと示された。これらの結果は,クマバチによる高い盗蜜被害を受ける島で,Cordia luteaの花弁サイズが大きくなる進化が生じ,その結果,花弁を掴みにくくなったクマバチによるためらい頻度が上昇し,盗蜜頻度が保たれていることを示唆している。


日本生態学会