| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-215 (Poster presentation)

日本産ササ類における推定雑種分類群を検出する分子マーカーの検討

久本洋子(東大・千葉演)

日本列島準固有種であるササ属植物には雑種形成により限りない中間形や複合体が数多く存在し、外部形態による種の同定が極めて困難である。しかも、葉緑体遺伝子は母性遺伝をするので、これらの雑種分類群を検出できない特性を持っている。本研究はササ類の雑種およびその両親種を検出可能な簡明な核遺伝子マーカーを開発することを目的とした。

日本海側に分布するチシマザサ節とチマキザサ節植物は広く重複分布し、両種の中間的な形態を示す推定種間雑種オクヤマザサの存在が知られている。そこで、北海道、長野県、岐阜県、福井県、富山県、栃木県、山口県において採集したチシマザサ節(チシマザサ、ナガバネマガリダケ)とチマキザサ節(チマキザサ、クマイザサ、イヌクテガワザサ)およびオクヤマザサの計48個体について葉からDNA 抽出精製を行った。採集個体は押し葉標本にし、栄養繁殖器官の外部形態に基づいて同定した。120種類のオペロンプライマーを用いてHAT-RAPD法によって一次スクリーニングを行い、再現性が高くチシマザサとチマキザサ節で異なるバンドパターンを示した6個のプライマーを選別した。それらのプライマーの増幅配列を基にSTS化プライマーを設計し、識別バンドのみを検出可能にした。検出バンドはNewHybridsによるベイズ推定を用いて解析し、種間雑種(F1、F2)や戻し交雑の識別を行った。その結果、2種が同所的に生育する分布地では浸透性交雑が起こっていることを明らかにした。

本方法ではSTS化によりRAPD法よりも再現性や識別能が改善された。また、PCRと電気泳動法のみで識別を行うためコストや時間が抑えられ、誰でも簡易に行うことが可能となった。


日本生態学会