| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-219 (Poster presentation)

東南アジア熱帯雨林における多孔菌類の種多様性:低緯度地域では種多様性が高いのか?

*山下聡(森林総研),服部力(森林総研関西),岡部貴美子 (森林総研)

生物の地理的な分布には古くから興味が持たれており,緯度との関係は多くの分類群で注目されてきた。菌類では、植物葉圏の内生菌では熱帯地域で多様性が高い一方,外生菌根菌では中緯度地域を頂点とするともいわれ、必ずしも低緯度地域で多様性が高いとは限らない。近年、木材腐朽菌の種多様性に対する関心が高まっているが、熱帯地域での研究例は少なく、広域での多様性のパターンを評価できない。本研究では,東南アジア熱帯地域の原生林である多孔菌類の多様性を評価したうえで、既存の研究成果を加えて、多様性の緯度系列に伴うパターンの検出を試みた。

ボルネオ島ランビルヒルズ国立公園の原生林に設置した計1.4haのライントランセクトで2005年に二回,多孔菌類の子実体を採集した。その結果、合計105種が得られた。また、マレー半島パソーの原生林に設置された2haのプロットで1995年から1998年に5回行われた野外調査の結果を再度整理したところ、パソーでは5回の調査で合計160種の多孔菌類の子実体が得られていた。

多孔菌類の種数を記載している野外調査のうち、調査地の緯度、標高、調査面積に関する情報が得られる研究を探索したところ、20件が該当し、123プロットの情報を得ることができた。ランビルヒルズ国立公園とパソーの結果を加えたうえで、緯度と標高を説明変数とし、種密度(調査面積当たりの種数)を応答変数として、相関関係を調べた。その結果、中緯度、低標高で種密度が高い傾向が認められた。

今回認められたパターンは外生菌根菌の例と類似しており、資源タイプの豊富さで多様性のパターンが説明できる可能性がある。ただし、解析に用いたデータには偏りがあるため、さらなるデータを加えていく必要がある。


日本生態学会