| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-227 (Poster presentation)

微生物群集の系統的多様性の全球パターン

*藤井正典(東大・秩父演習林),伊藤亮太(千葉大・理),平尾聡秀(東大・秩父演習林)

微生物は極めて高い分散速度を持つため、その地理的分布は局所的な環境要因によって規定されると考えられてきた。一方で、近年の研究から、微生物群集の多様性は分散制限や進化履歴の影響を受けることが示されており、必ずしも環境要因だけで規定されないことが認識されつつある。したがって、微生物の地理的分布における規則性を明らかにするためには、多様なプロセスの影響について検証する必要がある。しかし、これまでに報告されてきた研究結果は、対象とする地域やそのスケールによって様々であり、統一された見解には至っていない。そこで、本研究では、明確な空間的隔離をもつ湖沼を対象としたメタ解析を行うことで、全球スケールでの微生物群集の地理的分布パターンを解明した。

解析に必要な論文データを収集するため、学術文献データベースWeb of Science(Thomson Reuters Inc.)を用いて文献検索を行った。対象とする環境を、厳密に内陸表層部の溜り水とするため、河川や地下水、ラグーンから得られたデータは除外した。また、極端な人為的影響を考慮し、塩田、水産資源養殖場、鉱山跡、工業汚染区、操作実験区も同様に除外した。加えて、対象とする微生物を、自由生活性の好気性真正細菌とするために、嫌気層、底泥、湿地、生物体表面、およびバイオフィルムから得られたデータを除外した。さらに、実験方法による偏りを低減するため、解析に利用する塩基配列は、真正細菌もしくは原核生物のリボソーマルRNA遺伝子を対象とするユニバーサルプライマーを使用し、DNAクローニング法によって無作為に得られたデータに限定した。本講演では、得られたデータに基づいて、微生物群集の系統的多様性の全球パターンについて議論する。


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