| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-230 (Poster presentation)

植生環境と周辺土地利用が異なる緑地における節足動物相の比較

富田基史,阿部聖哉,松木吏弓(電中研)

節足動物は種数・個体数が多くきわめて幅広い環境に生息していることから,緑地環境を指標する生物群のひとつとして利用されている.本研究では,周辺の植生や緑地間の連続性が異なる千葉県我孫子市と群馬県前橋市の2つの地域において,緑地の節足動物相と植生環境を比較し,緑地環境の評価に利用できる指標種を抽出することを目的とした.

各地域において春季(6月)・夏季(8月)・秋季(11月)の3回,植生環境が異なる調査区(スギ/ヒノキ人工林・アカマツ林・広葉樹二次林・草地:各5地点)にて,ピットフォール法とスウィーピング法を用いて節足動物相の定量調査を行った.また植生環境の調査として,調査区ごとに上層木被度・植生高・植被率・リター厚・土壌含水率・土壌硬度を測定した.

ピットフォール法による調査では両地域あわせて53種が採取でき,オオヒラタシデムシ・センチコガネやオサムシ科など肉食性・腐食性の昆虫やアリ類が大半を占めた.一方,スウィーピング法による調査では両地域あわせて129種が採取でき,小型のハエ・ハナアブ類・アリ類が多く採取できた.

調査区ごとの採取個体数と植生環境の関係を正準相関分析によって解析した結果,ピットフォール法で採取された種のなかでは,オオヒラタシデムシ・センチコガネがリターが厚く湿った環境を好むのに対し,オオゴミムシ・アリ類がリターが薄く乾燥した環境を好む傾向が見られた.これらの種は季節を通して採取されたことや比較的同定が容易であることから,植生環境の中でも土壌環境の違いを指標する種の候補となると考えられる.一方,スウィーピング法で採取された種と植生環境のあいだには明瞭な関係は見られなかった.


日本生態学会