| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-231 (Poster presentation)

琵琶湖南湖における沈水植物と底生動物の分布

*井上栄壮,永田貴丸,石川可奈子(琵琶湖環境科学研究セ),西野麻知子(びわこ成蹊スポ大)

琵琶湖では、1994年に観測史上最低水位を記録して以降、南湖で沈水植物(水草)が大量に繁茂するようになった。このため近年、船舶の航行障害、湖岸に漂着した流れ藻の悪臭発生や景観悪化、局所的な湖水の停滞によるアオコ発生などが問題となっている。こうした状況の中、演者らは、2010年時点の南湖のユスリカ相について、コナユスリカ属の1種、ウスグロヒメエリユスリカなど、幼虫が水草に付着して生息する種が多く、オオユスリカ、アカムシユスリカなど、幼虫が底泥中に生息する種は少なかったことを報告した。本発表では、2011年以降の南湖における水草繁茂と底生動物の分布現況を把握することを目的として実施した9定点における調査の結果を報告する。

水草の採集は、有刺鉄線を長さ約50cmの金属棒に巻きつけ、ロープを接続した器具を使用した。各定点において、この器具を湖内に3回投げ入れて採集した水草を持ち帰り、種別に乾重量を測定した。2011年8月には、9定点の合計乾重量は5194.0gとなり、うちセンニンモが47.4%を占め最も多く、次いでコカナダモ28.7%、マツモ19.1%の順であった。一方、2012年8月には、9定点の合計乾重量は1329.2gと前年の約1/4に減少し、種別では2011年比でセンニンモが38.2%、コカナダモが4.9%、マツモが9.1%であった。底生動物についてはエクマン・バージ採泥器(開口部15cm×15cm)で定量採集した結果について報告予定である。

2012年に水草が減少した要因については、春季の水温が平年より低く水草の伸長が遅れたこと、夏季の放流量が少なく湖水の滞留時間が増加したため植物プランクトンが増加し透明度が低下したことなどが推察される。今後、水草の減少が続くのか、底生動物群集の変化の有無などについてモニタリングを継続し、動向に注視する必要がある。


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