| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-269 (Poster presentation)

潜葉虫のmicrohabitat選好性に対するtop-down効果

*綾部慈子,肘井直樹(名大院・生命農・森林保護)

生物の生活史の多様化をもたらす要因の一つとして,他種との相互作用が考えられる。たとえば,植食性昆虫—寄生蜂のような拮抗的関係において,寄生蜂からのtop-down効果に対する防衛手段の発達は,植食性昆虫の進化や多様化に影響する要因であると予想される。

植食性昆虫の1グループである潜葉虫は,幼虫期に葉の内部に潜入して内部組織を摂食し,マインと呼ばれる,視覚的に目立つ摂食痕を葉に残す習性をもつ。マインの視覚的目立ちやすさは,寄生蜂を誘因して高い寄生圧を招くため (Connor & Taverner 1997),潜葉虫にとって寄生蜂との相互作用は,適応度への影響を通じて潜葉習性の多様化に影響をもたらす重要な要素であるといえる。

こうした潜葉虫では,種分化の過程で,葉の表よりも裏への潜葉習性が広く進化している (Lopez-Vaamonde et al. 2003)。この理由として,葉裏のマインの方が視覚的に目立ちにくく,寄生を回避しやすい可能性が示唆されている (Reavey & Gaston 1991)。したがって,潜葉場所の違いが,寄生蜂との相互作用を通じて潜葉虫のパフォーマンスに影響を与えるかどうかを検証できれば,潜葉習性の多様化の解明において重要な手がかりを得られるものと考えられる。

演者らはこれまで, 常緑樹ネズミモチの葉を利用する潜葉虫の一種Phyllocnistis sp.(ホソガ科)を用い,葉内の潜葉場所 (表vs裏) と寄生率との関係を調査してきた。葉表に形成されたマインは,葉裏のマインと比べて,寄生率が有意に高く,寄生回避において不利な場合があることが判明している。本発表では,潜葉場所別に寄生蜂群集を比較し,葉表のマインがより多くの寄生峰種から攻撃を受けやすいかどうかを検証する。


日本生態学会