| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-280 (Poster presentation)

寄生バチの性比を調節して適応度を測定する

*安部 淳(神奈川大・理・生物),上村佳孝(慶応大・生物)

性比調節の分野は、進化生物学においてもっとも成功を収めてきた分野のひとつである。様々な状況において最適な性比を求める数理モデルが考案され、各状況において予測される最適な性比で実際の生物が産卵・出産していることが実証研究によって示されてきた。しかし、この分野における大きな問題は、数理モデルで仮定する各性比に対する適応度が、実際の状況において測られていないことである。

寄生バチMelittobiaは、雄が羽化した寄主から分散しないため、性比は局所的配偶競争(LMC)モデルに従うと予想されるが、実際の性比はモデルの予測よりも極端に雌偏向である。例えば、寄主に2頭の雌親が産卵する場合、LMCモデルが予測する最適な雄率は21.4%であるが、実際は2%程度である。この理由として、本属の雄成虫間で特徴的にみられる闘争により、後から羽化する雄が殺されやすいため、雌親が殺されやすい雄を産むのを避けている可能性が考えられる。この効果を含めた動的ゲームモデルは、闘争の効果が強いほど最適な性比は雌に偏ると予測している(Abe et al. 2007; Behav Ecol)。そこで今回は、実際の性比(2%)、LMCモデルによる最適性比(21.4%)、その中間の性比(10%)でそれぞれ産卵する雌親を想定し、各雌親の適応度を測定した。マイクロサテライトマーカーの遺伝子型をそろえて蛹の段階で性比を調節し、その後、雄間闘争と交尾をおこなわせ、孫の遺伝子型から各雌親の適応度を計算した。実際に雄間闘争が行われる状況においてどのような性比が進化するのか、ゲームモデルが想定する状況を実際の寄生バチを用いて計算し、進化的に安定な性比を考察する。


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