| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-290 (Poster presentation)

捕食者個体群内のサイズ変異がエサ種との相互作用を決める: 捕食者種の共食いと成長に注目して

*高津邦夫(北大・環境科学院), 岸田治(北大・北方圏FSC)

捕食者は共食いをする。共食いが起こると捕食者個体群の様々な特徴が変わるため、共食いは他種に対しても影響すると予想される。過去の研究は、共食いによる「個体数の減少」と「共食いされる可能性のある個体の行動の変化(共食いされないよう動かず餌を獲らない)」が下位の餌種への捕食圧を弱めることを一貫して予測してきた。一方、今回私たちは共食いが餌種への捕食圧を強めることもあると予測した。共食いが起こると「共食い個体が大型化」し、餌の好みや獲得量が変わることで、むしろ捕食されるようになる餌種もあると考えたからだ。本研究ではこの予測を確かめるために、共食いをするエゾサンショウウオ幼生(以下サンショウウオ)とその餌種のエゾアカガエル幼生(以下オタマ。大型の餌種でサンショウウオは大型化しない限り食うことが難しい)をモデルとした水槽実験を行った。実験ではサンショウウオ個体群のサイズ変異の大きさを操作し、「サイズ変異大(共食いが起こりやすい)」と「サイズ変異小(共食いが起こりにくい)」処理区などを作り、同居するオタマにかかる捕食圧を比較した。同時にそれぞれの個体群の様々な特徴も比較し、捕食者の共食いの影響を広く探索した。実験の結果、「サイズ変異大」で確かに共食いが盛んに起こり、大型化した共食い個体がオタマを活発に捕食し、その個体は大きく早く変態した。また、この処理は他の処理に比べて、生き残ったオタマの数が少なく、防御レベルが高く、変態タイミングが遅く、変態時のサイズが大きかった。一連の結果は、捕食者の共食いが、餌種へのトップダウン効果を強め、両種のさまざまな特徴に作用することを示している。これらの影響は他種へと波及し、群集レベルで大きな意味を持つかもしれない。


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