| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-330 (Poster presentation)

環境データのスコア化が分布予測に与える影響

*平山 寛之, 粕谷 英一(九大・理・生態)

生物の保全のためにはその生物の分布を把握する必要がある。現実にはすべての生物の分布を調査することは不可能であるため、分布推定モデルが広く利用されている。分布推定モデルを使用することで、特定の調査地点の気候や地形、土地利用などの環境情報の基礎データから実際には調査していない地点であっても潜在的なハビタットを推定し、その保護に活用することができる。近年、このような分布推定モデルは目覚ましい発展をとげ、様々な手法が提案されている(GLM, Maxent, Random Forestなど)。正確な分布を推定するためには精度の高い基礎データの使用が必要である。しかし、面積など連続尺度で計測可能な基礎データであっても、計測の困難さからスコアのような情報量の低い順序尺度あるいは名義尺度で記録され、使用されることがある。こうした基礎データの情報量の低下は予測精度の低下をもたらすと考えられる。しかし、実際にどの程度の低下をもたらすのかは明らかにされていない。本講演では連続尺度で得られた基礎データを順序尺度のスコアに変換し、情報量を人為的に低下させ、予測精度がどのように変化するかを調査した。分布予測にはGAM、GBM、GLM、MaxEnt、Random Forestの5つの手法を用いた。23の基礎データのうち、1つをスコア化することによって大多数のケースで予測精度が低下し、予測精度の指標であるAUCが0.3以上低下する場合もあった。予測精度の低下はMaxEnt、GAM、 GBM、GLM、Random Forestの順で大きかった。また、スコアに変換した変数の予測への貢献度が高いほど予測精度の低下が大きい傾向があった。一方で、スコアの細かさは予測精度にほとんど影響しなかった。スコア化された基礎データの使用は予測に用いる手法や変数の貢献度によって影響の大きさに差はあるが、潜在的な予測精度を低下させる。


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