| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-342 (Poster presentation)

韓国南部の離島におけるユーラシアカワウソ Lutra lutra の生息状況

*金炫禛(東農大・農),安藤元一(東農大・農),小川博(東農大・農)

韓国南部には小さな離島が多く分布し、その一部にはユーラシアカワウソ Lutra lutra が生息する。これら離島の多くは本土から遠く離れているので、本種が日常的に泳ぎ渡れる距離ではないし、面積も小さいので各島の個体数も限られていると予想される。このため離島10カ所において、本種の生息状況を生息痕跡調査と住民への聞き込みによって調べた。調査した島の面積は0.5-17.8km2、各島の海岸線延長は3.8-41.8㎞、本土からの直線距離は8.2-96.3㎞、本種が本土から島伝いに泳ぎ渡るために必要な最長渡海距離は1.4-34.5㎞であった。本種の生息情報が得られた島は10島のうち7島であり、情報の無かった3島はいずれも直線距離41㎞以上、最長渡海距離19㎞以上の位置にあった。情報の得られた7島は、いずれも本土からの直線距離65㎞以内、最長渡海距離31㎞以内の位置にあった。生息していた7島のうち最も離れた島は渡海距離31㎞の黒山島(フクサンド)であった。この島は海岸線延長が40㎞もあるので、本種が孤立個体群として生息している可能性がある。生息情報の得られた最小の島は、小每勿島(ソメムルド、面積0.5㎞2、海岸線延長3.8km)と麗瑞島(ヨソド、面積2.5㎞2、海岸線延長10km)であった。前者は本土から2.5㎞しか離れていないので本土と日常的に交流可能と考えられたが、後者は他の島から18㎞も離れているので、少数の本種が孤立個体群として生息していると考えられた。後者の海岸における糞密度は2.7個/500mであり、本土の海岸における糞密度2.3個/500mと類似した値を示した。本種が生息していた島では、船着場の土手や養殖筏からも糞がみつかった。さらに、網の中で溺死した個体の情報を得るなど、本種が人々の生活圏と近い場所で暮らしていることが知られた。


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