| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-364 (Poster presentation)

多摩川支流三沢川源流部におけるカワモズクの分布の推移とその要因

*野呂恵子(明大・農),倉本 宣(明大・農)

多摩川支流三沢川の源流部には、湧水源のある流水中の浅い場所に生育する淡水産紅藻類であるアオカワモズクとチャイロカワモズクの2種(以下カワモズクとする)が生育し、冬期に成体が目視で容易に観察可能になる。明治大学がこれらのカワモズクが分布する三沢川の源流部に隣接する場所に農場建設を始めた2010年5月に、施工者は本種の保全のため「水を切らさない、有毒物を流さない、濁水を流さない、水温を上げない」ことに配慮した河川改修工事をおこなった。

前報では、工事半ばである2011年冬、本種の保全を目的として、流程の調査区各地点でのカワモズクの分布状況を、河床の状況、水面上の植物カバー、水質などとともに調査した。また源流部の特定の範囲については詳細な分布も調査した。その結果、工事以前はみられた下流側での生育は確認できず、保全策は成果をあげなかったようにみえた。

農場の建設工事終了直後の2012年冬、前年と同じ地点で調査をおこなった。その結果、広範囲の地点において水面上の植物カバーが著しく変化し、カワモズクの分布状況にも変化がみられた。川の南側の斜面において巾15m、延長約300mの伐採がおこなわれた上流部の調査区では、その全ての地点でカワモズクの分布が確認された。また、工事以前には本種の生育がみられたものの、河川改修後の2011年冬には確認できなくなっていた下流部でも復活がみられ、工事にともなう改修で新しく作られた河床にも生育がみとめられた。

2012年冬の源流部での詳細な分布については、調査開始初期において2011年冬の状況に比べて繁茂がみられ、最終的には調査区内の水流のある部分全てで生育が確認されるようになった。

2011年冬と2012年冬のカワモズクの分布状況の推移と環境調査結果とを比較し、変化の要因を検討する。


日本生態学会