| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-383 (Poster presentation)

地権者との協定によるオオタカ繁殖地保全

山田辰美,*法月直也(富士常大環防研),新井真(日本オオタカネットワーク)

本保全策は、生物学知見を用いたオオタカ繁殖地の望ましい森林への育成・改善と、地権者とのデカップリング(直接補償制度)の考え方を採用した協定によるオオタカの既存の繁殖地を保全し、安定的に継続して繁殖することを目的としている。

富士山静岡空港建設の課題として、周辺の自然環境に配慮し保全していく必要があった。対象の地域に生息するオオタカを保全するために、空港事業区域(530ha)だけでなく広域な区域約4,000haを保全対象の範囲に設定し、その地域で同時に営巣が確認された最多つがい数である4つがいのオオタカが、安定的に繁殖活動を継続できる営巣環境を保全・整備することを保全目標とした。保全のために重要な範囲として管理が必要な地域を営巣環境保全エリアとし、エリア内は環境改善対策の実施、地権者とのデカップリング(直接補償制度)の考え方を採用した協定を交わし、保全策が実施されてきた。

デカップリング(直接補償制度)の考え方として、私有林から材を得るという主な目的を切り離し、オオタカ保全の観点から評価し対価を支払うということである。保全協定の内容は、①繁殖期の山林への立ち入り・地形改変の禁止等、②静岡県が営巣環境改善対策の実施、③①、②を承認することで所得補償を得ることの3点である。平成14年には3営巣地で合計約28haの山林で保全協定を締結し、現在まで10年間協定を更新してきた。残りの1ヵ所は、自然保護地域として公有地化した。

各協定地について10年間繁殖状況モニタリングを実施し、オオタカの保全に有効であり、地権者とも良好な関係を続けてきた。地権者との協定により保全してきた協定地のオオタカの営巣状況について報告・検討する。


日本生態学会