| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-436 (Poster presentation)

同所的に生息する外来魚食魚ハスとオオクチバスの食性比較:山梨県河口湖の事例

*角田裕志(岐阜大・野生動物セ),浦野隆弘(農工大・院),大平充(農工大・連農),千賀裕太郎(農工大・農)

特定外来生物であるオオクチバス(以下、バス)による捕食が日本の在来生物群集に与える影響については多数の報告がある。しかし、バスと同じニッチを占める在来肉食性魚類との種間競合についてはほとんど検討されてこなかった。そこで、日本固有亜種の魚食性魚類であるハスとバスの餌資源を巡る種間関係について検討することを目的として、ハスの非在来個体群が生息する河口湖において、両種の胃内容物の比較を行った。両種の採捕調査は、2011年5月から10月にかけて、遊漁権を購入した上でルアー釣りによって実施した。捕獲個体から得られた胃内容物について、餌項目ごとに相対重要度指数比を求めた。また、帰無モデルテストを用いて両種の食性の重複度を検証した。胃内容物分析の結果から、バス(n=49)は主に甲殻類と魚類を、ハス(n=83)は主に昆虫類、動物プランクトン、魚類を採食していた。両種の食性の重複度は0.23で、帰無モデルテストでは有意な重複は認められなかった。本研究で観察されたバスの食性は国内の先行研究と同様であった。その一方で、既往研究では、バスが同所的に生息しない水域におけるハスは魚類を専食することが報告されており、本研究結果と大きく異なった。河口湖では漁業権魚種であるバス成魚の放流が行われており、バスの高密度状態が維持されている。このため、餌資源を巡る二種間の種間競争が生じていると考えられる。同じニッチを占める2種が同所的に共存する場合、競争能力のより低い種においてニッチシフトが起こると考えられている。ハスに比べて体サイズが大きく、攻撃性が強いとされるバスは、競争的に優位であると推察される。このことから、ハスが魚食性から昆虫食へとニッチシフトし、両種の餌資源分割が起きたと考えられた。


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