| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-452 (Poster presentation)

長野県のダム湖におけるシグナルザリガニ駆除を目指した取組

*北野聡(長野環保研),岸部大輔(信州大・理)

シグナルザリガニ(ウチダザリガニ) Pacifastacus leniusculus は2006年に特定外来生物に指定された後も北海道や本州の冷水域において分布を拡げており,最近になって長野県のダム湖でも新規定着が確認された.水域は標高約900mに位置する湛水面積10haの多目的ダムで,その一部はワカサギやイワナの釣り場としても利用されている.我々は2010年に本種を現地において確認したのに続き,2011年から月に1回程度、カゴ罠によるザリガニの駆除を継続している.ここでは,これまでの捕獲調査で分かった分布様式,個体数動向,生活環,駆除に向けた課題についてまとめる.

捕獲調査では素材・形状の異なるいくつかの種類のカゴ罠(餌は魚類フレーク)を使用し,全長約8cm以上の個体を捕獲することができた.ただし,カゴの種類によって捕獲効率は異なり,暗色で開口部の狭いカゴで比較的良好な捕獲成績が得られた.本種は湖内に広く分布するほか,落差約30mのダム直下の渓流区間でもわずかながら生息が確認された.2011年夏季に油性マジックインキによる標識-再捕獲調査を実施したところダム湖の主要調査区で約1,400匹(湖全体で4,200匹)が生息していると推定された.一方,その後の一年で少なくとも1,300匹を駆除したが,2012年に実施した同様の調査では推定数4,400匹となり,我々の駆除活動によって個体数を減少させることはできなかった.その要因として繁殖期に活動性の低下する雌を効果的に捕獲できなかったことが考えられる.今後はダム湖からの流下分散について監視するとともに,湖内での生息数を低減させるために繁殖期前を中心に捕獲強度を高める必要があるだろう.


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