| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-456 (Poster presentation)

石灰窒素が灰色低地土からのN2O放出に与える影響

*山本昭範(農環研),秋山博子(農環研),直川拓司(電気化学工業),八木一行(農環研)

石灰窒素は施用すると、主成分であるカルシウムシアナミドが主にシアナミドと石灰成分に分解される。その後、シアナミドはいくつかの反応を経てジシアンジアミド(DCD)と尿素に分解される。このように生成されたDCDが硝化抑制剤として作用することで、一般的な肥料に比べ施肥効率が高まり、N2O放出が削減されると考えられる。しかし、石灰窒素のN2O放出削減効果に関する研究はこれまでほとんど行われていない。そこで本研究は、石灰窒素のN2O放出削減効果を明らかにすることを目的として、灰色低地土の圃場における栽培実験を行った。

圃場実験では、①慣行肥料区(化成肥料)、②石灰窒素区(施用窒素の全量を石灰窒素で施用)、③DCD入り肥料区(DCD入り化成肥料)の3処理を4連で設け、コマツナを栽培した。窒素施用量は茨城県栽培基準(120kg ha-1)に従った。その結果、N2O放出の時間変化パターンは施肥区間で明らかに異なった。慣行肥料区とDCD入り肥料区では、土壌水分が高い状態で数日間持続した後に数回の大きなN2O放出のピークが観測された。石灰窒素区では、他の施肥区で見られたN2O放出のピークは観測されず、施肥20~40日後に大きなN2O放出の減少が見られた。慣行肥料区に対する各処理区の総N2O放出量(63日間)は、石灰窒素区で64.6%減(P < 0.05)、DCD入り肥料区で19.4%減であった。また、石灰窒素区とDCD入り肥料区における土壌の硝化活性(アンモニア酸化活性)は、慣行肥料区に比べ抑制されていた。石灰窒素区では、DCD入り肥料区よりも硝化活性が長期間抑制されていた。以上から、灰色低地土において、DCDが硝化を抑制することでN2O放出に影響しているのに対し、石灰窒素は、硝化と脱窒の両方の過程を抑制することでN2O放出に影響している可能性が高いと考えられた。


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