| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-471 (Poster presentation)

渓畔林の落葉分解過程に対する樹種構成と微環境の空間的異質性の影響

*松下通也, 川北真伊 (秋田県大), 星野大介 (国際農研), 星崎和彦 (秋田県大)

リターの分解は土壌中の微生物組成や養分動態に影響し、種子の発芽・実生の定着に影響を及ぼすため森林生態系にとって重要である。リターの分解過程に及ぼす個々の要因について、葉の形質の種間差や光や温度等の環境条件の影響が実験的研究により明らかにされている。しかし、実際の林分において生育樹種の分布パターンを反映し、リターの供給量と種組成は空間的にばらつくが、それが局所のリター分解過程における空間的異質性にどの程度寄与するかについて評価した研究は限られる。渓畔林では河川攪乱等により多様な環境条件が形成され、様々な樹種がモザイク状に分布する。本研究では渓畔林におけるリターの現存量と分解過程の空間的異質性に着目し、落葉の供給総量と種組成、および微環境のばらつきが、林内のリター分解の空間的異質性にどう影響しているか検討した。調査地とした岩手県内の渓畔林では、カツラ、トチノキ、ブナ、イタヤカエデ等が混生する。リターの空間的なばらつきを明らかにするため、調査地内を10m間隔で格子状に区切りリタートラップとコドラートのセット64個を設置した。リタートラップ内の落葉量を樹種ごとに計測することで落葉供給の量と質(樹種組成)を評価し、またコドラート内の地表面リターを回収し乾重量を計測することで6~9月にかけてのリター現存量の減少率を求めた。微地形区分、明るさ、温度、時期変化を環境因子として、落葉供給の総量とそれに占める各樹種の占める割合を生物的因子の説明変数として、リター分解過程に及ぼす要因について解析を行った。その結果、微環境条件や落葉の供給総量の影響は総じて小さく、落葉に占める樹種組成の空間的不均一性が各場所におけるリターの分解過程に影響を及ぼしていることが示唆された。


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