| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-487 (Poster presentation)

日本(三陸・鳴門)・中国・韓国に生育するワカメの安定同位体比・微量元素組成の挙動解析

鈴木彌生子(農研機構・食総研)・國分敦子(理研ビタミン)・絵面智宏(理研ビタミン)・中山和美(理研ビタミン)

一般的に、水界生態系において、一次生産者の炭素・窒素同位体比は、生育環境中の栄養塩の濃度やそれらの炭素・窒素同位体比、光合成時の環境(成長速度)などの影響を反映する。とくに、沿岸域の一次生産者の安定同位体比は、河川などによって流入する陸由来の有機物や人間活動由来の有機物の影響を受けやすい。よって、固着性の藻類であるワカメの炭素・窒素同位体比は、その生育環境を反映し、地域によって変動すると考えられる。本研究では、日本の食材としても価値の高いワカメについて、生育環境の違いと炭素・窒素同位体比の比較に加えて、微量元素組成についても比較を行った。

試料は、三陸・鳴門・中国および韓国において、2011年および2012年に素姓の明確な試料を採取した。各検体は、オーブンにて乾燥後、ミルにて粉砕した。粉砕試料を元素分析計‐質量分析計(EA-IRMS)を用いて炭素・窒素同位体比を測定した。また、粉砕試料をマイクロウェブにより湿式分解後、誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)を用いて、12元素(Mg・P・Ca・V・Mn・Fe・Zn・As・Rb・Sr・Cd・Ba)を測定した。

鳴門産の窒素同位体比は10.8±1.5‰(平均値±標準偏差)となり、三陸産(0.6±1.9‰)・韓国産(1.2±1.7‰)・中国産(1.7±1.9‰)よりも有意に高い傾向が得られた。瀬戸内海では,陸域からの人間活動由来の窒素同位体比の高い有機物が海域の食物連鎖に大きく寄与している可能性が報告されている。よって、鳴門産の窒素同位体比が有意に高い値を示すのは、瀬戸内海へ流入する陸域からの人間活動由来有機物が海域の食物連鎖に大きく寄与していると示唆される.また、12元素の組成を比較した結果、中国産については特徴的な傾向が得られた。


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