| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-HS16 (Poster presentation)

塩湿地性稀少樹種ハマナツメ群落を調査して得られた知見

*小川栞奈,*脇祐也,*鳥羽高史,*野中真優(三重県立尾鷲高等学校・自然環境研究部・部員),前義典,山本和彦(三重県立尾鷲高等学校・自然環境研究部・顧問)

ハマナツメはクロウメモドキ科に属する落葉低木で、日本南部の海岸塩湿地に分布する比較的稀な植物である。主幹を持たず,根元から多数の幹を伸ばす特異な樹形を形成し,幹や枝に鋭い棘を有している。三重県の南東から南部にかけての海岸部にも10ヶ所ほどハマナツメ群落を見ることができ、私たちはここ数年、主に県南部の群落地で生態調査を行っている。調査を通して下記に示したようないくつかの知見を得ることができた。

・ハマナツメは通常数個体~数十個体で群生し、1個体のみということも珍しくないが、海跡湖周辺には数百株、時には1000株をこえる大きな群落が発達する。

・ハマナツメの幹は、ある程度まで成長するとその肥大成長は停止し、その後枯死するようだ。株元からは毎年数本の萌芽幹が供給され、世代交代を行っている。ハマナツメは萌芽更新により個体および群落を維持していると考えられる。

・成熟したハマナツメ1個体が生産する繁殖器官数は27万から150万ほどになった。

・近年三重県内のハマナツメ群落地ではシカの食害が激しく、枯死に至る個体も見られる。


日本生態学会