| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


企画集会 T01-4 (Lecture in Symposium/Workshop)

リズムを主題に生理学と生態学をつなぐ

近藤倫生 (龍谷大・理工)

群集生態学において、数理モデルは重要な役割を果たしてきた。多くは、実際に観察される生物の特徴を数理モデルに組み入れ、その帰結を調べることで、現実の生態学的過程やパターンを理解することを目指す。過去の研究では、生態学的な巨視的特徴をモデルに組み込み、その帰結を探るモデリングが盛んであった。だが、最近になって、生物の個体レベルの生理学的過程や行動を考慮したモデリングが注目されつつある。このような個体レベルの過程を考慮に入れたモデリングは、時としてそれを考慮に入れなかった場合とは全く異なる振る舞いを示す。では、これらの個体レベルの過程を考慮に入れた数理モデルの予測は、我々の観察しているどの生態学的パターンと、そして、どの程度関係があるだろうか。本講演では、これらの異なるモデリングが、同一生物群集の異なる時間・空間スケールにおける特徴を説明する可能性について議論したい。そのために、生物個体群がもつリズム、すなわち世代時間、と我々の観察時間の時間スケールに依存して、生物群集の振る舞いがいかに違って理解されうるかに注目する。古典的な群集生態学のモデリングでは出生と死亡によって駆動される個体群動態を考慮することが普通であった。だが、より短い時間スケールで観察されるパターンについては、出生・死亡の代わりに、同化・呼吸という生理学的過程、あるいは移出・移入という個体レベルの行動によって駆動される個体群動態を考慮すべきかもしれない。特に、極端に短い時間スケールでの群集パターンを理解するための道具として、移出・移入といった行動のみによって駆動される生物群集動態モデルを提案し、そこから導かれる予測とそれらが成り立つ条件について論じる。


日本生態学会