| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


企画集会 T04-4 (Lecture in Symposium/Workshop)

絶滅危惧植物への影響から耕作放棄地を仕分ける

*大澤剛士, 神山和則(農環研), 三橋弘宗(兵庫県立大)

農業生態系は人間活動によって改変された生態系であるため、耕作放棄が農業生態系に及ぼす影響には、少なくとも1)「生物多様性第二の危機」と呼ばれる人間活動の減少による環境劣化(Under use crisis)と、2) 利用圧の低下による環境復元(Habitat recovery)の2種類が考えられる。つまり、耕作放棄地は生物多様性に負の影響を及ぼす場合と、正の影響を及ぼす場合の両方が存在している可能性がある。これまで画一的に捉えられがちであった耕作放棄地が農業生態系における生物多様性に及ぼす影響について、それが内在する複数の影響ならびに、どの地域がどんな影響を及ぼしているのかを明らかにすることができれば、今後も広がっていく可能性が高い耕作放棄地を管理していくための指針に役立つ情報を提供できる。

そこで本研究は、日本全国を対象に、耕作放棄が広がっている地域と、”元”普通植物種23種(元来全国に広く分布していたが、現在は分布域の大部分で絶滅の危機に瀕している)の分布域の関係から、少なくとも絶滅危惧植物に正の影響を及ぼしていない“だめな”耕作放棄地を抽出することを目的とした。評価の単位は約10km四方の区画(2次メッシュ)を採用し、メッシュ内の耕作放棄面積に加え、圃場整備状況、農地の利用状況といった各種農業活動の空間分布と、”元”普通植物種の分布の関係を検討した。結果、大規模な圃場整備を経験した農地には、放棄を含む農地利用状況に関係なく、絶滅危惧植物が分布できなくなっている可能性が示唆された。

得られた結果をもとに、耕作放棄地と絶滅危惧植物の関係を表す概念モデルを構築し、耕作放棄が絶滅危惧植物にもたらす影響を区分けしたい。


日本生態学会