| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


企画集会 T11-7 (Lecture in Symposium/Workshop)

地震・津波の生態系への影響を広域スケールで比較する

*山北剛久 (JAMSTEC), 山田勝雅 (国環研), 島田直明 (岩手県立大・総合政策), 富田瑞樹 (東京情報大)

東日本大震災が沿岸生態系へ及ぼした影響について、様々な調査が行われ生物群集への被害も報告されている。知見が蓄積されつつある今、情報を集約し、震災の影響を一般化することが課題である。被害の規模と範囲、再生の可能性、地盤や底質改変による二次的な変化を把握することで、震災が地域の生態系全体へ及ぼす地誌的な影響を評価できる。そのため本研究では、福島県から青森県まで90地点の植生・ベントスの震災後の調査データを集約し、被害の大小やタイプと立地や地理的関係を比較する。解析には本集会の演者らの調査データを用いると共に、各地点の状況と今後の論点についてアンケートを実施した。特に生態系の被害について無被害を含む4段階、元の生態系への回復可能性について大・小・無しの3段階の評価によって比較した。

アンケートの結果、ベントス調査を行った干潟・岩礁48地点中、多くで中程度の被害が見られ、3割で大規模被害が、2.5割で小規模な被害がみられた。回復可能性については、壊滅的な被害を受けた場所以外は、多くの場所で回復はするが、回復に数十から数百年かかると判断される場所もあった。また、地盤沈下や塩分集積、護岸工事などにより、不可逆的な変化が起こり別の生態系へ変化する場所も多くみられた。震災による生態系への影響について今後考えるべき論点として、群集全体の変化と地誌的評価、津波と地盤沈下の影響の分離、従来の撹乱の研究との比較、堆積物・流入物の影響、回復可能性の評価、希少種の変化、十分なアセスメントの無い広範囲の沿岸整備への懸念などが挙げられた。発表では、さらに地図上での地理的特徴と被害の大小との関係の比較、調査の実データの解析を通じ、今後の論点についてデータを用いた検証が可能かどうか検討する。


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