| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


企画集会 T12-1 (Lecture in Symposium/Workshop)

カルタヘナ議定書におけるリスク評価の実施義務

上田匡邦(神戸大・院・国際協力)

カルタヘナ議定書が定める事前通告に基づく合意手続(AIA手続)が実効的に機能するためには、リスク評価とリスク管理の実施が不可欠である。そこで、本講演では、主に、このAIA手続と輸入国の決定に先立って実施されるリスク評価手続について国際法上の視点から解説する。第1に、なぜリスク評価が必要とされるのか。まず、その理論的な基礎の一つであると考えられる「予防的アプローチ」の概念について触れ、カルタヘナ議定書におけるAIA手続の内容とリスク評価の位置づけを検討する。次に、カルタヘナ議定書のAIA手続と現在改定作業中のリスク評価に関するガイダンス文書の交渉経過を紹介し、このガイダンス文書がどのような意義を有するのか国際法上ありうる論点を整理して、提示する。

このガイダンス文書の策定には、科学、国際法、政治の要素が複雑に絡み合い、各締約国や関係する主体の立場には大きな隔たりがある。従って、オンライン・フォーラムやアドホック技術専門家グループでの議論の行方がどうなるか、また、それらの結果が今後どのようにガイダンス文書に反映されるのか、動向を注視してく必要がある。さらに、より根本的な問題として、途上国も含め、いかにしてリスク評価の国内的実施を確保していくのかなどの課題もある。


日本生態学会