| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


企画集会 T15-1 (Lecture in Symposium/Workshop)

伊豆沼・内沼の自然再生に向けてのマガン・ブラックバス・ハスの関係性

嶋田哲郎((財)宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団)

自然再生の現場において、外来種問題や特定種の増加は大きな問題である。在来種の駆逐や生態系のバランスをゆがめることで地域の生物多様性の劣化につながる。宮城県北部にあるラムサール条約登録湿地の伊豆沼・内沼は、内陸の水田地帯に位置し、面積491ha、最大水深1.6mである。2009年10月に開催された伊豆沼・内沼自然再生協議会で、これまでの知見をもとに全体構想が策定され、1)生物多様性の保全と再生、2)健全な水環境の回復、を目標にさまざまな取り組みがなされている。

伊豆沼・内沼ではマガン、ブラックバス、ハスの3種による沼の環境悪化や生物多様性への影響が懸念されている。マガンは天然記念物であり、保護されてきた種であるため、個体数抑制などを目指した管理には共通認識の醸成が必要である。また、負荷量の科学的な位置づけ(=現状の把握)が不可欠であり、財団だけでなく大学や県の研究機関との共同研究による慎重な調査を続けている。オオクチバスは、年々減少し、魚類相も回復し始めているものの、低密度管理を維持するには、現在の防除技術を改良する必要が出ている。また、根絶できない場合には、その永続的な防除コストをどのように 負担していくのかが課題となっている。ハスは観光資源としての価値が高く、地域と共通認識を醸成し、管理目標を設定することが必要である。また、300ha 近い群落を管理するには、大きなコストが課題となっている。

これらの現状を整理すると、伊豆沼・内沼における生態系管理では、共通認識の醸成、現状の把握、防除技術、コストの4点から、それぞれの種の管理方法を考える必要があることがみえる。財団はこれらの管理活動の中核団体として取り組んでおり、技術開発等は大学と、コストは県や国との協議で、共通認識の醸成のための普及啓発に取り組んでいる。


日本生態学会