| 要旨トップ | ESJ60 自由集会 一覧 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


自由集会 W33 -- 3月7日 18:00-20:00 H会場

静岡の農村に見る「内なる生物多様性」

企画者: 稲垣栄洋(静岡農林研)

地域の農林水産業は、気候や地形などさまざまな自然条件の制約を受けながら、成立している。静岡県は海抜0mから標高3776mまでの標高差を持ち、東西に長い地形であることから、多様な環境条件に依存して多種多様な農業が行われている。事を流通している農産物に限っても、静岡県で生産される野菜や果物などの品目は167にも上り、この数値全国でも有数の品目数である。このような風土の多様性に依存した農業の多様性は、生物多様性と無関係 ではないだろう。農村の二次的自然は、そこに暮らす人々の営みによって維持されてきた。そのため、農村の生物多様性は、地域の農業や暮らしと密接に関係している。

これまで農村の生物多様性は、研究者や都市住民など外部の人間によって主に評価されてきた。しかし、農村の生物多様性の担い手は、地域で農業を営む農家の方々である。そこで最近では、外部の視点に対して、地域に住む人たちの視点から生き物を見る「内なる生物多様性」を評価する試み(愛媛県 2012)も見られる。人々の暮らしの中にある地域の生物多様性は、ときに地域の文化や伝統食を生み、また、地域の誇りやアイデンティティを醸成する役割さえ担ってきた。このような地域それぞれの農業を担う人々の「内なる生物多様性」をひも解くことは、農村の生物多様性保全の目指すべき方向に示唆を与えることにならないだろうか。本集会では、静岡県の農業・農村の多様性と生物多様性の関係の事例や、多様な文化や自然環境を有する農村を支援する静岡県の取組みを紹介しながら、これからの地域の農業のあり方と、農村の生物多様性の保全のあり方について議論を深めたい。

生物多様性を守る「ふじのくに美しい邑づくり」 佐藤光(静岡県農地保全課)

静岡の茶生産が守る草原の生物多様性 稲垣栄洋(静岡農林研)

焼畑文化が育んだ雑穀の多様性 多々良典秀(静岡市文化財課)

在来作物を巡る人と自然:その保全と課題 富田涼都(静岡大学農学部)

農業・農村の多様性は生物多様性に貢献するか? 日鷹一雅(愛媛大学農学部)


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