| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) B1-09 (Oral presentation)

絶滅危惧種アカガシラカラスバトの採食生態: DNAバーコーディングを用いたアプローチ

安藤温子*(京大院・農), 鈴木節子(森林総研), 堀越和夫(IBO), 鈴木創(IBO), 梅原祥子(IBO), 半谷吾郎(京大・霊長研), 村山美穂(京大・野生研), 井鷺裕司 (京大院・農)

絶滅が危惧される動物の食性を把握することは、その生態を解明し、効果的な保全策を講じる上で不可欠である。特に、深刻な人為撹乱を受けた海洋島の生態系においては、外来植物が絶滅危惧種の主要な食物として機能している可能性があるため、在来植生の回復や外来種の駆除を適切に行う上でも重要な情報となる。近年、次世代シーケンサーを用いたDNAバーコーディングに基づく食性解析手法が急速に発達し、顕微鏡を用いた従来法よりも詳細な情報が得られることが期待される。そこで本研究では、小笠原諸島の固有亜種であり、絶滅危惧種ІA類に指定されているアカガシラカラスバトColumba janthina nitensを対象に、葉緑体trnL P6loop 領域のDNAバーコーディングに基づく食性解析を行った。

DNAバーコーディングを用いた糞分析の検出能は、顕微鏡による分析よりも明らかに高いことが示された。特に、組織断片が糞に残りにくく、顕微鏡による同定が困難な植物は、DNAバーコーディングのみで検出される傾向にあり、本手法の有効性が示唆された。小笠原諸島父島及び母島におけるアカガシラカラスバトの食物構成は、季節によって大きく異なっており、外来種の利用頻度は夏に高い傾向にあった。また、父島と母島の間でも食物構成に違いが見られ、アカガシラカラスバトが、島ごとに異なる食物選択していることが示唆された。発表では、アカガシラカラスバトの食物構成、生息地の結実状況、及び果実の栄養価のデータを総合し、本亜種の食物選択パターンと生息地の適切な保全策について議論する。


日本生態学会