| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) B1-11 (Oral presentation)

ジャワヒョウの生息環境保護と住民の森林利用の両立-グヌンハリムンサラク国立公園の事例

*杉村乾(森林総研・企画), Kridalaksana, Age(CIFOR),Rinaldi, Dones(ボゴール農大・森),Nursal, Wim(広大・総合)

ジャワヒョウは絶滅が危惧されている亜種であるが、生息地近くに居住する住民による森林利用との両立も図らなければならない。その生息地の一つであるグヌン・ハリムン・サラク国立公園内に31台のカメラをのべ721日にわたって設置し、ヒョウの確認地点、カメラ設置点周囲の上層木、公園境界や村からの距離、カメラトラップされた他の種との関係、2001~2003年に行われた同様の調査との比較などをもとに、保護と公園管理について考察した。

確認された3頭のヒョウがトラップされた地点と確認されなかった地点を比較したところ、上層木のDBH、樹高、樹種構成についてハビタット選好性は見られなかったのに対し、公園の境界や村から離れた地点での確認頻度が高かった。公園の境界は森林と農地・茶畑・集落の境となっており、地域住民は法的に利用が禁止されている林内、境界からおおむね500m以下の区域で枯木の枝や下草などを採取していることから、ヒョウは人の利用域を避ける傾向があることが示唆された。また、過去の調査結果と比較してヒョウのトラップ頻度は0.05から0.20回/日に増加したが、確認頭数に差はなかった。一方、他の哺乳類のトラップ頻度は0.012から0.072回/日に増加したが、主な餌動物であったイノシシとリーフモンキーが確認されず、大半が小型獣であった。これらのことから、原生的な森林の保護がヒョウの保護に直結するとは言えない一方、住民の利用と両立させるために境界近くでは林産物の採取を法的にも認めるのがよいことなどが示唆された。また、ヒョウが捕食している種が大きく変化している可能性があるので、その影響を見るためにモニタリングを続ける必要があることが示された。


日本生態学会