| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) B1-14 (Oral presentation)

まずは「川を知る」ことから - 三崎川の再生に向けた取り組み

山下慎吾(魚山研)

高知県土佐清水市を流れる三崎川は,流路延長7.5km,流域面積約26km2の小河川であり,1944年に河口の付け替えがおこなわれたのちサンゴ群集が発達する竜串湾に流入するようになったという特徴をもっている。竜串湾は,足摺宇和海国立公園内にあり,2001年9月に発生した高知西南豪雨による泥土流入をきっかけとして,2003年には環境省がサンゴ群集の衰退原因の究明と再生状況の把握を目的とした自然再生推進計画調査を開始,2006年9月には竜串自然再生協議会が設立され,現在も自然再生事業が進められている場所である。三崎川流域においては,これまで水質水文調査はおこなわれてきたが,その結果はわかりやすいかたちで流域住民に公開されたとはいえない状況であった。また,魚類などの生物調査は実施されておらず,地元小学校における授業の一環として生物観察をおこなったのみで,基礎情報がない状態となっていた。

そこで,三崎川の再生に向けて,まず基礎情報として魚類やエビカニ類の種組成を知ることを目的として,川に興味ある一般の方々が気軽に参加できるしくみづくりをおこなった。調査は,2013年7月から2014年1月まで月1回(8月欠測),三崎川流域の4地点において,小型定置網を用いた定量調査を行った.調査の結果,これまでに魚類18種類,エビカニ類11種類が確認されたほか,夏季や冬季に瀬切れが発生する箇所や,人と川との距離感などがわかってきた。フィールド調査には5歳から50歳代までの性別も職業も異なる15名が参加して実施した。また地域の研究発表会において,結果の報告や,撮影した写真を用いたフォトストリームなどもおこなった。本発表では,このようなしくみを続けていくなかで起こってきた思わぬ波及効果についてもお伝えしたい。


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