| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) B2-08 (Oral presentation)

生態系サービスの経済的価値の評価と山間地域の事例研究の評価結果の活用方法について

*永野友子(富士通研究所),小森谷均(富士通研究所),胡勝治(富士通研究所)

生態系の保全促進を目的に、森林等の景観を保全することの価値を生態系サービスから経済的に評価する研究が行われている。今まで世界遺産の屋久島などが研究されているが、国土面積の73%を占め、森林と農地が混在する中山間地域での研究は少なかった。今回、森林面積が行政区域の90%以上を占める中山間地域のうち、自然や生態系の保全の意識が比較的高い、高知県高岡郡中土佐町、宮城県刈田郡七ヶ宿町と連携し、森林や農地の景観保全の価値を経済的に評価した。

評価手法には「生態系と生物多様性の経済学(TEEB)」の段階的アプローチを用いた。手順は、①関係者の聞き取り調査、②重要な生態系サービスの抽出、③居住者と来訪者への、文化的サービスに関する表明選好法の仮想評価法(CVM)を用いた景観保全への支払意思額(WTP)と生態系に配慮した産地米の購入意思の調査とした。③では、中土佐町でのWEB調査(居住者234人、全国の来訪経験者465人と未経験者456人)、七ヶ宿町での、居住者への訪問と郵送による調査(123人)および来訪経験者へのWEB調査と地域商業施設の来場者への調査(637人)を実施した。居住者と来訪者を分け、回答者の真意を引き出すように質問を工夫した結果、WTPを基準に景観保全の経済的価値を明確化できた。さらに、クロス集計の結果、性別、年代、収入、訪問回数、生態系の機能(景観、伝統的農村文化の継承、土砂崩壊防止、水源地涵養、生物や生態系の保全)、将来への保存の意識、保全活動への参加有無などの属性と回答者の真意の相関が明確になった。

今回、本評価手法の有効性を確認できたので、評価結果を生態系サービスの可視化による地域活性化につながる生態系管理の施策立案などに活用することが期待される。


日本生態学会