| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) C1-10 (Oral presentation)

山間部の里山集落における資源植物の多様性と生態系サービスの経年変化

*小柳知代(早大), 米澤健一(十日町市), 市川薫(国連大高等研), 山田晋(東大), 北川淑子(多摩丘陵舎)

本研究では、景観スケールでの資源植物の供給サービスの定量的評価を通じて、里山における伝統的な植物資源利用の変遷と地域の植物種の多様性との関係を明らかにした。新潟県十日町市に位置する2集落を対象とし、市町村誌などの文献資料から対象地域で資源利用が行われていたと考えられる植物種とその利用法に関する情報を収集した。対象集落に在住する年長者計6名に聞き取り調査を行い、文献から得られた資源植物種について、利用経験の有無、利用期間、利用価値に関する聞き取り調査を実施した。また、対象集落における資源植物の現在の分布を明らかにするため、棚田景観の主要な構成要素(二次林、農道や水路沿い斜面、田畑や民家周辺)を対象として植生調査を行った(計140地点)。文献で示された資源植物116種(利用数:145タイプ)中、対象集落で実際に利用されていた植物は92種(114タイプ)であり、戦前から近年までに約4割の利用タイプが消失していた。野外植生調査で確認された植物計415種中、資源利用対象種は63種(利用数83タイプ)であった。調査地点における植物の種多様性(Shannon’s H’)や機能多様性(Functional Diversity: FD)が高いほど、資源利用の多様性(Utilitarian Diversity: UD)が高かった。立地ごとの資源植物の出現頻度と過去と現在の利用価値を指標として供給サービスの量(=供給力)を定量化した結果、資源植物の供給力は、戦前から現在にかけて広葉樹林を除く全ての景観構成要素で有意に低下していた。本研究から、伝統的な植物資源の利用と地域の生物多様性とは密接に関連しており、農業活動に付随する管理活動を継続する事で、潜在的な供給サービスを維持・向上できる可能性が示された。


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