| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) D1-18 (Oral presentation)

オオアシトガリネズミの飼育下における交尾と育仔

*沖本康平,下井岳,橋詰良一,亀山祐一(東農大院生物)

【目的】トガリネズミ形目は霊長目と齧歯目の両者の間を埋める動物モデルとして意義が認められている。我々は同目の道内最優占種オオアシトガリネズミに着目し、2009年から実験動物化に向けて調査、採取、飼育を行ってきた。本研究では雌雄同居による繁殖実験を行い、交尾行動と育仔行動を撮影することに成功したので報告する。【方法】オオアシトガリネズミは5~10月に墜落缶で捕獲し、ジャンボミルワーム、冷凍コオロギ、配合飼料で飼育した。繁殖実験の供試個体は尾の被毛で前年産まれと思われるものを選抜し、体毛ゲノムによるPCRで性別を確認した(第58回日本生態学会)。雌雄同居は多孔板の仕切りで24時間の馴化をした後に3日間行った。【結果】同居中の行動は雌から雄への接触が多く、闘争は見られなかった。同居中の雌で腰を左右に振る動作が観察され、求愛行動と推測された。産仔が得られた1例では、乗駕は同居開始後36~38時間に観察された。その例における平均乗駕時間は39.4秒(最長4分43秒)、乗駕回数は51回であった。乗駕行動は主に暗期に観察され、産仔が得られなかった例では散発的に行われた。育仔中の雌は床材とした藁で、半球状あるいはドーム状の巣を形成した。産仔が巣外に出た場合、母個体は産仔の首あるいは背中を噛み、巣内に連れ戻すレトリービングをした。また、一部のトガリネズミ形目で見られるキャラバン行動(産仔が母個体の尾の付け根を噛んで移動する行動)と思われる行動も見られた。本研究によりオオアシトガリネズミは複数回の交尾をするintermediate copulatorであることが示された。


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