| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) D2-02 (Oral presentation)

雌雄同体の進化に関する低密度仮説の再検討

*桑村哲生(中京大・国際教養),鈴木祥平(東北大・災害科学),門田立(水研セ・西海水研)

雌雄同体の進化を説明しようとするこれまでの議論は、Ghiselin(1969)が提唱した2つの仮説が基盤となっている。すなわち、同時的雌雄同体の進化に関する低密度説low-density modelと、隣接的雌雄同体(性転換)の進化に関する体長有利性説size-advantage modelである。低密度説は、個体群密度が低い場合に限らず、同種個体との出会いの機会が極端に低い条件においては、卵と精子を併せ持つ同時的雌雄同体個体が有利であると予測する。一方、体長有利性説は、成長(年齢)に伴い繁殖上有利な性が逆転するときに、性転換個体が有利であると説明する。たとえば、雄間競争により大きな雄が雌たちを独占して一夫多妻になる魚類では、雌から雄に性転換(雌性先熟)する個体の生涯繁殖成功(適応度)が最大になる。また、ランダム配偶では雄性先熟が有利であると予測する。これまでサンゴ礁魚類などで、このような配偶システムのタイプと性転換の方向に対応があることが実証されてきた。しかし最近になって、一夫多妻・雌性先熟のサンゴ礁魚類において、雄から雌へ逆方向に性転換することが発見された。発表者らはそれが一夫多妻種において低密度条件で自然選択されてきた繁殖戦術であることを野外実験で実証してきた。すなわち、従来の体長有利性説では説明できなかった性転換の方向が、個体群密度の影響を考慮することにより説明できたのである。そこで、雌雄同体のタイプと個体群密度との関係を改めて検討し直してみた結果、体長有利性説と低密度説の統合が必要であることが明らかになってきた。


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